久々に絵本。

The Snowy Day

The Snowy Day

 

 切り絵、スタンプ、ベタ塗り、薄塗り、色んな手法を合わせた絵がとても良い。

見返しには雪の結晶が淡い色合いで踊っており、本編へ入る前から夢心地。。。

 

雪の朝、ベッドで目覚める男の子の服がアフリカンぽくて、読み進むと出てくるお母さんの様子などからもやはりアフリカンアメリカンのようだった。表紙からは全く気付かなかった。

 

後で調べたところによると、フルカラーの絵本では初めてアフリカンアメリカンを主人公に据えた作品だそう。もとは挿絵画家だった作者が、アフリカンアメリカンやその他のマイノリティーが主人公の作品ってないんだなと気付いて自分で書くことにしたそう。1964年の刊行。その年の優れた子ども向け絵本に贈られるCaldeott Medalという子ども向け絵本の賞を受賞してます。

Welcome to the Caldecott Medal Home Page! | Association for Library Service to Children (ALSC)

 

で、Wikiによると、作者自身は黒人でないことをがっかりする人も多かったよう。それはまあ想像できる。確かに私もこの本を読み、上記のような経緯を知ると、作者もアフリカ系かなと思った。Ezraという名前もアフリカ系なのかなと推測したけど違った(ポーランドユダヤ人、ブルックリン生まれ)。私は別にがっかりはしないけども。

 

さらに批判を受けたりもしている。文中で人種について触れていないとか、人種の違いを無視すぎていて(wikiによると、too integrationist 差別撤廃主義者、とある)、アフリカンアメリカンの文化や人種を表したり讃えたりしたものではないとか。刊行がちょうど黒人や黒人の文化を讃える意識が高まった時期でもあった。

 

ちょっとこの辺りは私には想像が及ばなかったな。黒人が主人公なんだけれど、だからどうこうっていうのじゃなく、子どもが普通に雪の1日に興奮して楽しむ、という話なのがいいなと思ったんだよね。

 

でも差別の歴史があり、それがずっと続く社会で被差別サイドで生きていれば、なんで白人が黒人の子の絵本を書いてるんだ、と、黒人や黒人家庭のことも何も知らないだろと、思う気持ちも、あくまで想像だけれど想像はできる。

 

圧倒的に優位な立場である白人が、黒人をモデルにした作品を描くことで利を得るという構図は不平等、新たな搾取、軽く扱いすぎ、と捉えられることもあるのだろうな。全く普通の日常を描いているにしても、主人公が黒人であるということで注目を集めた、ということはあるだろうし。

 

最近、Vogueの白人モデルと日本文化を併せた写真が問題になっていて、あれも私はへーと思ったのだけれど。白人という圧倒的マジョリティーが、マイノリティーの文化を扱うことってデリケートな領域なのだな。アートへの昇華に見えるような場合でも。

 

Prof. KellyのBBCインタビューのナニー騒動も思い出した。私も一瞬ナニーだと思った後に、でも母親かも?と思った。第一印象がナニーだった理由はいくつかあって。ナニーはアジアンが多い。子どもがミックスに見えなかった、白人に見えた。父親との服装の違い(父はビジネススーツ、母はカジュアル)。あの慌てっぷり。くらいかな。多分、床に座る文化のない人にはかがんで床面を移動する彼女の姿もナニーっぽく映ったのでは。

 

人種とは、PCとは、と、思いがけない方向へ思考が運ばれましたが、この本については、単純に絵の素晴らしさを味わうといいと思います。本当に、心が温まったり楽しくなったりする良い絵なので。