読書の記録

本の記録しばらく続きます。

 

不自由な絆

不自由な絆

 

 これもママたちの話。ママなだけでない、女の話。家族の話。赤ちゃんを連れて偶然再会した同級生二人の家庭が軸となって進む、子らは幼稚園児から小学生、そして中学生になる年月を描いた長編。赤子の育児に疲れ果てる主人公、幼稚園に進みなぜか暴力に訴えてしまう子。根回しして園に訴える周りの母親たち。病院に発達障害ではと相談に行くとそうではないとの判断で「病気にしたい病」なんて医師に言われてしまう。主人公も夫も、義父母も理性と知性があるところが大きな救い。主人公の理性と知性は長男に振り回されて普段は出てこないけど、ここぞという所では、冷静さが戻ってきて、こういうの大事よね…と思う(子どものことで謝罪だけでなく、慰謝料を要求され、弁護士通さなくてはと冷静に言う当たり。結局先方は旦那がおかしくてお金が欲しかっただけ)。夫も共通の理性があり、義父母も乱暴の止まらない孫にすごく理解がある。最強である。こんな家族、親族、うらやましい。それでも親の悩みはほんとに尽きなくて。小学校に上がると事態はある面では一層複雑になる。腕力はあっても、賢い(ずるがしこくもある)同級生に操られてしまう程度の知性の息子もいじめの手先にされてしまう。でも息子さえいじめられなければ、息子が問題にならなければ、と思ってしまう母親。ひどいし悪い、けれど、これまでの苦労を考えると、単純に責められない気もしてしまう。

 

ほんと色々なことが起きて過ぎて行く、他にも登場人物があれこれなのですが、終盤は軽やかに進む。子らは中学生になり子育ても少し落ち着き(それまでに比べれば格段に落ち着き)、母親たちは再会し和解する。

 

なんでこんなに大変でなきゃいけないのーーーと思う。小説だけれど、事実もある程度、これくらいたいへんなこともあるだろうし、これ以上に大変な日々を送る母親もいるだろう。

 

しばらく前に女性のストレス度の記事を見かけたけど(どの程度正確に表せるものか大いに疑問もある)、上位も下位も地方(上から鳥取和歌山岐阜、下から福島沖縄富山)、大都市は低くない(東京17位、大阪10位)。1位の県にフィーチャーした記事だったけど、それ以外に言及するとまとまらないもんねえ。沖縄が下から2番目て??データについて全国7万人の女性対象委調査としか書かれてなくて、各県で何人に聞いたか、どういう属性の人に聞いたかでも結果がずいぶん違うだろう。

 

ただ、今住んでいる田舎町でストレスが低いとしたら、幼稚園~高校の選択肢が少ない、大学もとっても少なくて進学では外に出る子が多い(なので誰がどこへいっていようが普通はさほど気にならないのではと思う。気にする人はするだろうけど)、保育園はゼロ歳児4月じゃなくても入れる、人が少ない、満員の通勤電車がない、あたりかな。他にも色々選択肢は少ない=選ぶストレスがない、格差も見えにくい。生活費も、どうかなー、移住や居残りを推進したい人たちはお金がかからない!と言うけど。確かに家賃は低めだろうし家も持ちやすい。野菜や肉魚は新鮮な物が高くないのはほんとに嬉しい。町の作りが汚いのは私にはストレスだけど(きれいで気持ち良いエリアもある)。人が多過ぎないというのはたいていの場合ストレス度下がるんじゃないかな。ネガティブ要素が発生すると人が少なすぎるストレスというのも存在し得るけど。薄まらないから。

 

出掛けたいようなイベントやお店もとっても限られるし、おしゃれもさほど必要ないような。ここでかっこいい靴を履いても靴がかわいそうかなと思う。いい靴で行く場所ない。よくあるブランド物のバッグとかは田舎の人も持ってるけど、いい物は見かけない。たまに見たらおお!と思う笑。あんまりかっこいい車もここだとかわいそう。田舎だけどせまいのでそんないい道もない。この辺はいいのか悪いのかよく分からないしストレス関係ないか。

 

そいえば北海道で行方不明→無事発見の男の子、無事に見つかって本当に良かった。子育てってケースバイケース、その時々でほんと違って、山中に置いていくなんて!ていう反応も分かるし、もうそれだけで親は逮捕になるだろう国もあるけど、その場の状況やその場の親の気持ちって、その場じゃないと分からないよな、と思う。この小説(小説だけどさ)みたいにほんと他児へのわんぱくが止まらない、とかだと親もほんと悩んじゃうだろうし。冷静でいられなくなる時だってあるだろう。ニュース見ていて、ほんとなんだろうかとか、追いついた子をさらに置いてったと読んだ時には少し陰険ではと思わないでもなかったけど、2度置いていきたくなってるお父さんの気持ちが正常なものか手当てが必要なものかは専門家にお任せするべきこと。

 

こういう話に過度に批判的な子育て経験者ってふしぎ。たいへんさを知っているはずなのに。自分はたいへんだったけどそんなことしなかった!という気持ちだろうか。でも自分も周りがびっくりするようなことしてた人もそうなのは、そういうのは忘れているのか、そういう自覚があるから余計批判して自分は悪い親ではないということにしたいのか。

 

退院時、病院玄関ドアを出てから車に乗るまでがメディア公開で男の子へ質問も飛んでたりして驚いた。子どもはテレビに出さないだろうと思ってたし、父親ももう、発見時の会見でメディアに出るのは終わりかと思っていた。海外メディアでも取り上げられて、かわいいし、伝えられてるサバイバルぶりが話題性あるしで、露出に至ったのかと思うけど。最後、医師(おそらく)が男の子の背をやさしく押して車の方へ誘導したの良かったな。お父さんが終わりを示したっていいんだけど、医者が患者の会見は終了って言ってるんだよ的な誰も文句言えない無言の力が良かった。もうほんとにこれで終わりでいいと思う。静かに仲良く暮して下さい、と思う。

 

この子が見つかって、この子と一家の為に本当に良かったし、あまりに腹が立ったり困ったりして、子どもを山中に置いていこうかと思った時に思いとどまる親御さんもあるだろうという意味でも良かった。

 

それにしても、小説家と言うのはどうしてこうして色んな人のことを上手に言葉で描けるのか。すごいな上手だなと、単純な語彙で思うばかり。