proud of と come out

Cook氏の話のつづき。

日本版に日本語で掲載されてた↓

「ゲイであることを誇りに思う」-アップルのクックCEO - Bloomberg

 

こちらはhuff誌。


Tim Cook Comes Out As Gay In Powerful Businessweek Essay

コメント欄は、支持派が大多数だけど、なんでproud?とか、いちいちカムアウトせずに隠しとけば?の声も。(Appleについての指摘もあるけどそれはまた別の話だよね。)

 

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proudについては、ashamedの対義語だよ、not ashamed (恥じてない) って意味でしょ、というレスポンスもあって、私も最初にこの言葉見てそれくらいの意味かと思ったけど、読んでると、“ゲイであることは神が与えてくれたギフトの一つ”と記してるので not ashamed 以上の proud なんだな、そこまで思うのはなぜかなと読み進めると、huff誌で取り上げられてる箇所に行きついて。ここを読むと、ああ本当にproud なんだな、「誇りに思う」なんだな、と納得。

 

Being gay has given me a deeper understanding of what it means to be in the minority and provided a window into the challenges that people in other minority groups deal with every day. It’s made me more empathetic, which has led to a richer life. It’s been tough and uncomfortable at times, but it has given me the confidence to be myself, to follow my own path, and to rise above adversity and bigotry. It’s also given me the skin of a rhinoceros, which comes in handy when you’re the CEO of Apple.

 

(拙訳)ゲイである故に、マイノリティーであることがどういうことかをより深く理解できるようになった。他のマイノリティーたちが、日々どういう困難に直面しているか見る眼を持てたこ。より思い遣りのある人間になることができ、自分の人生はより豊かになった。辛い思いもしたし、居心地の悪い思いをしたこともあったが、その経験があったから、自分自身のまま生きる、自分の道を進み、逆境や偏見を乗り越える自信を持つことができた。面の皮もサイのように厚くなったのは、AppleのCEOにとっては便利でいいものだ。

 

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カムアウトについては、著名人がカムアウトするのは何でかなと思ったこと私もあった。別に言わないでいるじゃいけないのかなと。でも色んな人の言葉を聞くと分かる、差別や偏見を減らそう、なくそうとしての行為なんだと。それに、言わないでいると本業で話題になった時に、メディアがうるさい。あの人ゲイでしょ、なんで隠してるの、って言われたり。隠してなくても公表してないと隠してると言われたり。色々考えてあえて隠してる人もいる、そういう選択も別にあれこれ言われる筋合はないし、そういう人がカムアウトする時は、自分に正直に生きたい、自分自身を認めてやりたいっていう気持ちもあるだろうし、パートナーを大切にしたいっていう場合もあるだろう。

 

Cook氏は周囲にはオープンにしていて、講演でマイノリティーへの差別を経験したと話していたりして、そういうことで、特にカムアウトという形を取らなくても、社会が「受け入れる」という意識もないくらいに「何でもないこと」になって行けば良かったんだけど。

 

でもJobs氏の後任と目されそしてCEOに就任して注目が集まると、メディアはビジネスだけじゃなく、プライベートにもフォーカスしてくる。(huff誌記事で言及のあるのがこの記事。Meet Apple's New Boss, The Most Powerful Gay Man in Silicon Valley これはやだよね。下世話だ。)そういうのが、個人的にも面倒だし、ビジネス的にも望ましくないなと思ってのことでもあるんだろうな。仕事にフォーカスしたいと書いているのは、自身のフォーカスだけじゃなく、メディアやそれを目にする大勢の人達のフォーカスのことでもあるだろう。まあメディアはいつまでも、カムアウトしたCook氏についてまた何かにつけ引合いに出したりするだろうけど、うだうだ周りに言われ続けるなら、自分自身の区切りとして、いい形で公表するのは、いい意味で賢いと思う。

 

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ビジネスマンである彼が公表することの意義も大きいんだろう。huff誌で言及のNYT記事。"Where are the gay chief executive?"  (ゲイのCEOはどこに?) というタイトルや、大企業のCEOでゲイであることを公表している人があまりいない状況を考察、と聞くと、大きなお世話だろうよと思うけど、見えにくい企業カルチャーについての真摯な内容だった。

 

ざっと読んだだけだけど。企業におけるセクシャルマイノリティー(日本語だと、「性的少数者」という言葉があるみたいだけど、)に対する差別が著しいという話。

http://www.nytimes.com/2014/05/18/upshot/there-are-still-no-openly-gay-major-ceos.html?_r=1&abt=0002&abg=0

 

NFLはゲイを公表する選手をドラフト指名したが、アメリカのビジネス界はどうなってんのか、というコンテクストで綴られてる。

 

And gay, lesbian, bisexual or transgender executives face separate challenges breaking through the so-called pink ceiling. Their differences are often invisible. In some places, discrimination camouflaged as business strategy — “We’re tolerant, but our customers might not be” — is considered acceptable. Even as the gay rights movement progresses at a faster clip than civil rights movements before it, there is an overwhelming pressure in the workplace to hide one’s sexual orientation.

 

(拙訳)(性別や人種に基づく差別とは別に、) GLBTの管理職がぶつかるピンクシーリングと呼ばれる壁がある。この差別は、はっきりとは見えにくかったり、企業戦略としてカモフラージュされてしまう場合もある(会社としては問題ないよ、でも顧客は良く思わないかも…的な)。ゲイ(に限らずLGBTを指していると思う)の平等を求める運動は広まっているけど、職場で性的指向 (:セクシャルオリエンテーションの日本語) を隠さなきゃというプレッシャーは大きい。 

 

企業内の性的指向に基づく差別について研究している人たちの報告も含め色々書いてある。 

 

社内規定で差別を禁じていても、企業文化がそれを凌いでしまう場合は少なくない。(連邦法は、性的指向や性別に基づく職場での差別を禁じていない。)

 

企業のトップがゲイだったり、そうでなくても、差別を認めない・平等を公言することの影響は大きい。社員はトップの動き一つ一つに気付くから、トップが多様性を認める一文を発することは、企業は社員たちを支持していると伝えることになる。

 

 

もしトップがゲイであることを隠している場合、上層部の人間でも安心できないのに、一社員が安心していられないだろうという、厄介なシグナルを発していることになってしまう。

 

現状では多くの企業がこの厄介なシグナルを発している。これは、人権の問題でもあるが、企業利益にもかかわる問題でもある。優秀な人材が、歓迎されないと感じ求人に応募しなかったり、退職してしまうのは企業にとっての損失になる。

 

この、シグナルの観点から、Cook氏に公表を求める声やプレッシャーも多かったのかも。記事から記事へと辿っていくと、そういうのも見受けられる。これなどけっこううざい 。

The Most Powerful Gay Man in Silicon Valley Stays Quiet on Being Gay

平等や自分自身を認めて生きることを良しとするなら、影響力のあるあなたがなんでカムアウトしないのか?とかなり皮肉気味に言い募ってる感じ。何が何でも “I'M GAY” と言わねばならないのか。放っておいてあげれば??と思う。こういう勝手なプレッシャーも、差別行為なんじゃないかなー。お前ゲイなんだからゲイだって言えよみたいなのは。

 

上記のNYTの記事も、内容はいいんだけども、Cook氏の写真が象徴的に用いられていて、氏のプライバシーを尊重しておらず嫌な感じはある。記事に氏の名前は出てこないんだけど、記事の末尾に、「この記事は"openly"(公表している) という言葉に曖昧さがあった為リバイスしました。プライベートではオープンだが職場は含まない場合も公表と取る読者がいる一方、他の読者やHuman Rights Campaignは、公に自身で公表している場合のみと考えています。」とあるので、リバイス前は出してたのかな。読者やHRCがどう定義するかじゃなくて、記者のあなたがどう定義して書いたのか、前者なら記者としてよろしくない。