読書の記録

 

やわらかな棘 (幻冬舎文庫)

やわらかな棘 (幻冬舎文庫)

 

 いい色の表紙。裏面では黄色い蝶が一羽飛んでる。

 

繋がっている短編集。あまり頻繁に小説を読んでいないので、こういう形式が存在していることを認識していなかったけど、あるんだね。江國さんのもそうだった。

 

これもいろんな女とその周りの男や家族のお話。元同級生グループの普通の女の子たちに起きる普通じゃない出来事や、別の裕福な双子の姉妹とそのパートナーや家族。普通の女の子の一人は6年付き合った彼氏が条件のいい女性と結婚する話になってるのを知らされず、おかしいと思って家を訪ねて鉢合わせ、、、男は無言、以前あったこともある母親には酷いあしらいを受けて、復讐を考える。その結婚相手が裕福な双子の妹。ふわふわして出自で得して生きてるだけのように見えるけど、妊娠してある程度の肝っ玉も備わって、自分にも元カノにも嘘を吹き込んで結婚しただめだめな夫を見限るつもりはない。妹と対極の性質な姉の方は裕福な家系を疎んじて普通の苦労などを求め家を出ていて妹には自活ごっこと笑われる。「無理に下りて行くことはない」。別の女性は10代後半の浅はかな行動で妊娠し、中絶しようとしてできなくて、反発して無視していた母親に電話して泣いてことを告げる。産んだ後も育てられないいらない大嫌いと言ってしまうけれど母親の温かく強いサポートがあって子育てしている。その子どもの園ではやっぱり子ども同志の接触で母親がどんな風に子どもを守ろうとするのか。他には弟が死んでしまって過食症になって花屋でバイトする女の子の話。などなど。それぞれの再生。

 

彼女のしあわせ (光文社文庫)

彼女のしあわせ (光文社文庫)

 

 これもつながってる短編集。つながりは上の本よりはっきりしてるけど。姉妹の話。その母や伯母の話。独身で百貨店でのキャリアや一人の時間の充実を大切にしてる長女。夫の転勤で知らない田舎町に住み常に子育てでいらつきブログに逃げ込みきれいな暮らしを綴り読者との交流が生きがいの次女。十代で妊娠は難しい体と分かり不用意に打ち明けた少し付き合っていたような相手からひどい目に遭わされ、でも優しい夫と結婚したおっとりした感じの三女。夫にも義母にもないがしろにされ続けて来てとうとう切れる、三姉妹の母親。定年退職したけど変なプライドでいっぱいの父親。今は亡き夫と誰が見ても何の問題もなく幸せそうな夫婦だった伯母。

 

子供の頃と大人になってからの姉妹関係のあれこれ。家族の為に自分を犠牲にしてきたような主婦の悲哀。娘たちに愛情が偏らないようにと接したらかえって反発を招いたりと、良かれと思ったことが思うように伝わらない難しさ。父親が相当ひどいんだけど、でもこれくらいの人実際いるよね...うちの父もけっこうひどいとこある、あった。兄たちもおかしいし。

 

母親が家を出る時に書いたけど書き直しちゃった書置き、「昨日のあなたの言葉に傷つきました。夫婦でも言ってはいけない言葉はあります。思い遣る心のない人と一緒に暮らすのはとてもつらい事です。探さないで下さい。」ほんとこれだよね。思い遣る心のない人と一緒に暮さない方がいい。自分も歪んでいくから。

 

でもこのお父さん、割とすぐ反省したり、家出した妻が様子見に帰ってくれたらお茶を入れてあげたりと、見どころがない訳じゃない。現実だったらあんなひどい人間が短期間で妻にお茶を入れるところまでなかなか行けれないんじゃないかなあ。

 

それぞれある時期での苦悩があるけど乗り越えて丸かったり丸くなかったりだけど収まっていく人生。