イギリスの絵本。

かしこいビル (世界こども図書館A)

かしこいビル (世界こども図書館A)

  • 作者: ウィリアム・ニコルソン,まつおかきょうこ,よしだしんいち
  • 出版社/メーカー: ペンギン社
  • 発売日: 1982/06
  • メディア: 大型本
  • 購入: 2人 クリック: 6回
  • この商品を含むブログ (13件) を見る
 

 たいへんおもしろい本です。原題はそのままClever Bill。全て手書きの文字や、所々工夫のある文字の置き方に心つかまれる。訳も上手い!

 

おばさんにあそびにいらっしゃいと手紙をもらった女の子メリーはまいりますと返事を書いて、荷造りをします。いろんなおもちゃやおしゃれに必要なあれこれ、もちろん衛兵の人形であるかしこいビルもつれていかなくては。なのですが、いっぱいの荷物が上手く入るように色々入れ替えているうちに、ビルは、ビルは、トランクの外へ...

 

このシーン、白いページの真ん中に赤字で「なんと!!」次のページは青字で「なんと!!」。手書きの文字が劇画風。大泣きのビル!

 

この後ビルは数ページにわたり走って走ってとにかく走って「ドーバーえきで、メリーにおいつきました。」自分を忘れて行ったメリーに花束を渡す英国紳士、ビル。(フルネームは Bill Davis。)

 

この絵本、嬉しいおまけがついていて。役者による解説と、原書のページ全てが掲載されています。1ページに原書ページを全て掲載なのでほんとに小さいですが、なんとか文字も読めます。「なんと!!」「なんと!!!」は言語で何だったのか気になりますよね。なんと、「and!!」「and!!!」でした。ほんと、訳の上手さに脱帽なのです。解説は、常にあればよいというものではありませんが、この解説は良かった。楽しみが増しました。

 

訳が良いということは、もちろん原書も良い訳で(原書が良い=訳も良い、は常ではないけれど原書が良くないと良い訳にできない、はず)、ページをめくるのが待ちきれなくさせてくれる。心早らせる言葉の乗せ方がほんとに上手い。

 

緩急、リズムの良さ、スピード感、独特の愛らしさ。原文と訳のすばらしさ。色々と感動の一冊でした。

 

1926年の刊行。そんなに古いと思わなかった。イギリス本国でも名作として人気のよう。作者(絵も文も)のウィリアム・ニコルソン(Sir William Nicholson, 5 February 1872 – 16 May 1949)はイラストレーター、画家として割と有名だったのかな。調べてるとそういえばどこかで見たことあるようなイラストが多くあります。絵本は他に1冊、挿絵のみでもう1冊出しているよう。かしこいビルは、2番目の妻との娘メリーのために書いたと解説にはありますが、どうもメリーは最初の妻との娘のようで、名前間違えたのかな。娘メリー(=ナンシー)の子供のために書いたという節もあったり、判然としませんが、絵本作成の時期に自分の子や孫が生まれているようです。(子どものためにせよ孫のためにせよ絵本を書くなんていいおじいちゃん・お父さん、という印象が湧きますが、それはそれで、初婚・再婚時共に愛人がいたりはしてるよう。)

 

別の訳者(つばきはらななこさん)による「おりこうなビル」としても出ているようです。読み比べたい。

おりこうなビル

おりこうなビル

  • 作者: ウィリアムニコルソン,William Nicholson,つばきはらななこ
  • 出版社/メーカー: 童話館出版
  • 発売日: 2012/03
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る