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しばし前の読書記

 

いやしい鳥 紙の月 月と六ペンス (光文社古典新訳文庫) 庭師の娘

 

いやしい鳥。爪と目の文体が気に入って他のも読んでみようと。文体は違ったけど面白く読んだ。これを先に読んでいたら、爪と目もすんなりホラーとして読んだかも。鳥男の話と、母親と恐竜の話と、胡蝶蘭の話。怖い話三篇。

 

神の月。映画化という記事を見て読んだ。角田光代さんはこれまでエッセイを2冊読んだ、くらいかな。空中庭園読んだかな…。エッセイは軽やかで小説は重たいという印象。読みにくいとかいうことではなく、内容が重い。人生の、陽の裏側の陰を描いてて。これも一気に読んだ。誰でもふと陥りそうな怖さを感じた。あまぞんの感想をざっと見ると、私みたいな人と、全く共感できないという人と。後者の人は自分でも気付かないくらい自然に、とても恵まれた環境で生まれて育って暮らしている人たちなのかな、でも人間は本当に多様なのでそうとも限りはしないのだろうけど。色んな事件が頻繁に報道されるたび思う。何かが違えば違ったのかも。個人レベル、家庭レベルのこともあるけど、時代とか政策とか大きな流れによることもあるだろう。

 

月と六ペンス。乗ってくるまでは色々な描写が少し面倒だったりしたけど、乗ってからはぐんぐんと読み進んだ。株式仲買人から絵描きになりタヒチへ、という設定はゴーギャンの人生を下地にしているけど、その他はモームの創作に依るみたい。当時の世界情勢(「西洋」と「それ以外」とか、物や人の流れ)を説明してくれている解説も面白いし、役者のあとがきも前半は昔語りが鼻に付く感じもあるけど最後はかわいく収まってた。読後に、それで何が「月」と「六ペンス」?という疑問が残ったんだけど、解説にきちんと答えが。前作「人間と絆」の書評にあった言葉で、月は理想、六ペンス(銀貨)は(足元にあるのに気付かない)現実を表しているそうです。手の届くもの、家族や確実な仕事を大切にして平凡でも幸せに暮らすか、苦悩だらけでも理想を追い続ける人生を送るのか、どちらの道を行く人も、二つから一つを選ぶというよりも、自分の気持ちの進む方へ行くしかないかな。モームの他の作品も読んでみたくなった。この本の最後に、もう一度古典を、と、このシリーズ(古典新訳文庫)の紹介があって、10代の頃に読んだり読んでいなかったりした作品が並んでいる。今また読んでみるのも面白いだろうな。

 

庭師の娘。18世紀末のオーストリアを舞台にした、父の跡を継いで庭師になりたい娘の話。この頃はこの地域でも女性が普通にできるお仕事は限られていて、庭師はそういう仕事ではなく娘は修道女になるという予定だったんだけど、周りが上手く動いてくれて、思いがかなうのです。仕事だけでなく同時に好きな人との結婚も決まるというハッピーエンド。この、女性が普通に働くということはなかなかに根深い問題なのですね…。だってこれ18世紀が舞台。もちろん当時と現代では色々大きく違うし、今の日本では結婚出産後も働くのが普通と考える人も数十年前より随分多い、はず 。周りを見てると、女性社員の多い企業や、今の流れで政策を即反映する大企業だと、産休育休後の復帰もごく普通になってるように感じるけど、それがあまりにも普通という国に比べると、存在する悩みは変わっていなそう。もうずいぶん前に見たテレビ番組で、北欧の女性が「???なぜ妊娠・出産で仕事を辞めようか悩むの???」と言っていたのがすごく印象的だった。多分10年くらい前じゃないかな。日本よりひどい国も多いのも辛い話。で、この本ですが、庭の話も楽しい。フランス式庭園幾何学的な設計)が主流な中、娘は自由な、風景のような庭を考案して(イギリス式庭園と言われるタイプ)お屋敷の主人やその客人にも気に入られるのです。この本の訳者あとがきも、時代背景や登場人物について説明してくれていて、面白さが深まって良かった。屋敷の主人メスメル博士は実在の人物で、幼少のモーツァルトにまつわる逸話なども絡めてあって、楽しく読んだ。