受賞作を読む

家族が珍しく直木賞受賞作なんて買っていました。発表からそれほど経っていない頃だったかな。借りて読みました。(少しですがネタばれあります。)

途中途中のおもしろさと、最後まで読んだ時のおもしろさがあった。1編1編については、嫌悪感や距離感を感じる作品もあった。住職の妻の話は、嫌だったしちょっと受け狙ってない?と思ったりもしたし(私の読み方が浅いのか…)、ホテルの清掃を終え疲れ果ててなんとか短くない道のりを歩いて家へ帰れば働かない旦那が待ってて毎晩っていうのも読んでいて楽しくはない。貧しさと老齢を背負う人がミコという可愛い名前でなんだか辛さが倍増。色んな気持ちにさせられつつ、最後に全てのつながりが感じられた時はすっとした爽快感が少しあった。

こんなこと現実にある?(寺の話)と思いつつ(小説なのでなくてもいいんです)、田舎の主婦の話を読みながら、田舎に嫁いだ友人の話を思い出し(聞いてないのに教えてくれた。年齢に関わらず男性は性欲旺盛、というか、男はそうじゃなきゃっていうのがあるのかなその地域では)、当然ながら人間は十人十色だもんね…と思い直したりしました。


ホテルローヤル

ホテルローヤル

ここのインタビュー(青春と読書)にもあるけど、「官能シーンを入れなくてはいけないという縛り」に自分で縛られていたって。この本全体にそんな印象を受けたんだけど、ミコの話は「ふつうの地味なお話で、わたしの周りでありがちだったことを素材にしたもので、官能的なシーンもない」、縛りから離れて書けた、そういうシーンなしで受け入れられて嬉しかった、とあるんだけど、そうでもないんだけど。疲れた女房の体を気遣うようなこと言いつつ自分の性欲抑える程には気遣えない男と、いつも我慢して終わるまでやり過ごす女。本には「単行本化にあたり大幅な加筆修正を行いました」とあるんだけど、もし後から足したんだったら残念。(嫌悪を引き出すことも文学の力ではあるけど。)

他の作品の書評を読んで気になって、図書館で次々借りました。受賞以前の方が縛られてない感じがするんだけどな。受賞作だけが不自然に縛られている。受賞作よりも以前の作品や後の作品の方が、私は読んでいて楽しい。おもしろいテレビドラマを見てるような感覚。読みながらずっと映像が浮かぶ。こんなに一人の作家の本をじゃんじゃん続けて読んだことってあまりないかも。